未来のアーティストを育むアトリエ HOTサンダルプロジェクト

参加者の声

プロフィール写真

※掲載内容は2022年3月時点の情報です。

自分と、絵のことを見つめ直したかった。
そのために島は最適な環境。

移住しようと思ったきっかけは?

大学院2年生の時にHOTサンダルプロジェクトに参加し、小手島で滞在制作をしたのがきっかけです。島で過ごした1ヶ月はとても濃密で、東京に戻った後もずっと島のことが頭から離れませんでした。
ちょうどその頃は、翌年に大学院修了を控えて、修了後の進路を考えている時期でした。制作活動を続けたいけど、実家は親が仕事をしていて制作には不向きだったので、新しく部屋を探そうと思っていたんです。でも、東京だと情報が溢れているのがストレスになりそうで。いっそ環境を大きく変えて、自分と絵のことを見つめ直そうと思い、広島への移住を決めました。

移住にあたり、不安なことはありませんでしたか?

強いて言えば、新しい仕事のことと、虫のことくらいでしょうか。HOTサンダルプロジェクトで、島での生活がどんな感じかは何となく分かっていたので、そこまで不安なことはありませんでした。

実際に島に移住してみて、どうでしたか?

最初は島独特の分からない言葉がたくさんあって驚きました。「あいつはワヤやからゴジャやな」って言われてポカンとしたり。榊(さかき)のことを「しゃしゃき」って呼ぶのも妙におもしろくて、島の人が私を笑わそうとわざと言うので、それを聞くたびに笑っていました。
2022年4月で、島生活も7年目を迎えます。移住当初は2年ぐらいで島を出るつもりでした。ですが島の環境に慣れると、東京に帰省するたびに「なんて不自然な場所なんだろう」という違和感のほうが強くなっていきました。都会はいろいろなものが充実していますが、何もかもが「ありすぎる」んですよね。島での生活は、もちろん不便なこともありますが、その分余白があって心身ともにとてもリラックスできます。

島での印象的なできごとは?

魚を捌けない私にある時、島の漁師さんからビニール袋に入った何かをとポンと渡されました。開けてみると、なんと生きたナマコだったんです。ビックリしていると「それくらい料理せい!」と言われて、YouTubeを見ながら、ひとりでギャーギャー叫びながら、震える手で捌きました(笑)。初めて捌いたナマコは、とても美味しくて、命をいただいて生きていることを実感しましたね。

不便に感じることは?

島には平日営業の診療所が一つしかないため、土日に駆けこめる病院が無いことです。年齢を重ねるとそれなりに体の不調も出てくるので、健康には気を付けています。それ以外にも、都会にいる時よりほんの少し考えなければならないことは増えますが、工夫して折り合いをつけています。

現在のお仕事は?

以前は丸亀市内に通勤していましたが、船便の数が限られているため時間のロスが多く、日中島にいられる時間が少なくなっていました。現在は退職し、少ないながら個展などで絵を販売して生活しています。
島での生活は、だいたい毎日午前8〜9時頃に制作をはじめ、昼食をはさんで夕方5時頃まで絵を描きます。途中、海を見に行ったり、散歩したりして、次の絵の題材を探しに行くこともあります。展示会直前などをのぞいて、日が暮れてからは絵を描きたくないので、下図をつくったり、家事や事務作業をして、夜10時までには寝るように心掛けています。なかなか難しいですが(笑)、フクロウの鳴き声や、波の音を聞いていると、自然と気持ちが落ち着いて眠れます。どれも島だからこそ、できることだと思います。

現在はどんな作品を制作されていますか?

植物をモチーフとした作品を中心に、描いています。移住当初は、「色」を排除した表現をしたいと思い、墨を使ったモノクロの絵を描いていましたが、瀬戸内の日差しの下で生き生きとしている植物を見ているうちに、徐々に色数が増えてきましたね。
2017年に丸亀市生涯学習センター、2020年に市内のbouffier la rue(現graine la rue)というお花屋さんで個展をしました。絵を見にきてくれた方と話すことでアイディアをいただいたり、自分のやりたいことを改めて整理することができ、とても有意義な時間となりました。また、自宅に絵を飾りたいと言ってくださる方が多く、もう少し気軽に手に取ってもらえるような方法を考えるようになりました。クリエイティブなお仕事をされている方とも知り合うことができ、自分の視野も広がりました。

作品写真

今後の目標は?

最近は、日本画以外の表現も模索してみたいと考えています。技法でも、表現でも、生活の中でも、自分が無意識につくり上げてきた「枠」がたくさんあることに気づいたので、そこから一歩抜け出したいです。そのために、もっと多くの人と出会い、いろいろな場所に足を運びたいと思います。

丸亀市や離島への移住を考えている方へメッセージをお願いします。

私が島に移住すると決めたとき、賛成してくれる人はもちろんいましたが、同じくらい反対されることも多かったです。そんな時にも迷わず「島は魅力的なところだ!」と言い切ることができたのは、HOTサンダルプロジェクトに参加した経験があったからです。
良い意味でも、悪い意味でも、島は特殊な環境です。移住を考えている方は、移住したいと思っているところで1日過ごして、そのサイクル・リズムを体感してみると良いと思いますよ。

どんぶりいっぱいの魚

どんぶりいっぱいの魚、たらいに山盛りの牡蠣、段ボールに山積みの文旦…。島は美味しいものだらけですが、毎回、今まで見たことのない量なんですよね(笑)。

お気に入りの散歩コース

お気に入りの散歩コース。いつも1時間ほどかけて、畑や、かつて田んぼだったところを抜け、海に出ています。

散歩中に見つけた木の実

散歩中の発見から、絵の着想を得ることが多いです。歩きながら、素敵なものを探すことが好きなので、宝探しをしているような気分に。

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